"産業をつくる"ということの難しさと面白さと。
2020年春。僕はだだっ広いコワーキングスペースの中で、誰もいない光景をただただ眺めている日々を送っていた。世はコロナ禍、そして初めての緊急事態宣言。外を出歩くことすら悪と称された時代。そんな中、コワーキングスペースで仕事をするだなんて選択肢の人がいるだろうか。少なくとも当時はいなかった。
#コワーキングアドベント2023 というハッシュタグで25名の方が順々に投稿していただくアドベントカレンダー企画。ご参加頂いている24名の方に心から感謝しております。ありがとうございます。本日は私、大阪福島のコワーキングスペースGRANDSLAMの吉永が務めさせていただきます。
コワーキングスペースという事業を始めて5年目を迎えている。あの日描いた地図からは遠く離れたところにいるかもしれないが、それでも楽しく続けさせてもらっている。
僕が最近思うこと。”まだ無い産業をつくる”という自負と使命感を持つこと。
産業(industria)とは、人々が生活するうえで必要とされるものを生み出したり、提供したりする経済活動のこと。また、経済活動の分類の単位という意味でも使われる。
Wikipediaより出典
いやいや、産業をつくるだなんて大げさな~って思う方もいらっしゃるかもしれない。(僕が聞いたら思いそう。笑)
自動車、鉄道、家電、ITサービス、銀行、百貨店、商社、不動産、医療、、、日本や世界を見渡してみるとたくさんの産業があり、雇用があり、そこから経済が回る。上位企業の入れ替わりはあれど、高度経済成長期から脈々と繋がる日本経済の象徴とも呼べる産業がいつくつもある。
上記に挙げさせてもらった産業は、まさに"生きていくのには無くてはならいもの”。生活のインフラになっているものも。無くてはならないもので世界は構成されている。
僕らはコワーキングスペース・イベントスペースの経営に軸足を置いている。上記の産業と並ぶほど、コワーキングスペースって無くてはならないものか?
僕の中での答えは出ている。ぶっちゃけ、無くてはならないものではない。
静かなカフェはいくらでもあるし、なんなら家をオフィス化できるほどリモートワーク機器は発達した。
コワーキングスペースの経営を続けていて感じたことは、少なくとも全人類にとってなくてはならないものではないということ。でも、一定数の方には無くてはならないものになれる、そんな可能性を僕は感じている。社会的な価値のあるものだと信じているし、これからますますその価値は高まっている。
全員を幸せにできる魔法のようなものではないが、必要としてくれている人もたくさんいるサービスであるということ。ともすれば、コワーキングスペースはインフラになりうる世界線も確実にあると思うし、僕はそのポテンシャルを感じている。
コワーキングスペースという業態ができて、はや10年くらいだろうか。まだ経営のセオリーみたいなのもできていないと思っている。まだ先の見えない暗闇のトンネルを走っている。不安なことも多々あるが、コワーキングスペースという業態の特性上、たくさんの仲間ができる。さながらゲームのロールプレイングゲームのような感覚だ。だから面白い。これをやれば確実にうまくいく!が無い。めちゃくちゃ面白くてエキサイティングな環境。僕らはロールモデルのようなスペースを作りたいというよりは、唯一無二のスペースを作りたい。
僕らは箱貸し、会場貸しビジネスではなく、空間と時間を売っている。コミュニティとSNSでタテ・ヨコ・ナナメに繋がれる。これは<自分たち対お客様>の構図ではななく、<自分たちとお客様で構成するコミュニティ>の図だということに1年くらい経ってやっと気づいた。(2021年)
お客様同士・そしてイベントとイベント、コミュニティとコミュニティが繋がるのだ(早口言葉みたい)。これ、初めて聞くと何言ってるの?って思われるかもしれないのですが、SNSでの発信をしていれば、あの時、ここでイベントをされてた〇〇さん、参加されてた〇〇さん、という風に時空を超えた繋がりができる。
ここまで続けれているのはお客さんがお客さんを呼び、お客さんからいつしか”仲間”になり。一緒にイベントを企画し、それぞれの事業の苦楽を共有する。叱咤激励し合えることも。コワーキングスペースとイベントスペース、そして応援され、巻き込まれる環境を作ることができるのがコワーキングスペースだ。
冒頭の、"あの2020年春に見た光景"を僕は忘れられないし、忘れたらいけない。目の前に仲間がいるのが当たり前ではないからだ。
前に進み続けよう。仲間とともに。いつか、"コワーキングスペース"という事業が一大産業になる日を夢見て。
おわり。またね。
この記事を書いた人
吉永 亮(Yoshinaga Ryo)
1985年、兵庫県西宮市生まれ。立命館大学経済学部を卒業後、楽天グループ株式会社・株式会社ビズリーチ・株式会社ジェイエイシーリクルートメントと、IT・人材領域での経験を積み、2019年にコワーキング&イベントスペースを開業。 “成長・共創・つながり”が生まれるコワーキングスペースとしてコロナ禍真っ只中にOPEN。プロスポーツチームやスタジアムの在り方をコワーキングに転用し、”大阪でいちばん巻き込まれる場所”を作りつづけている。2024年のGRANDSLAMのスローガンは「ドラマチックコワーキング」。